ぐうじあいさつ
日本では、神田祭をはじめ祇園祭や天神祭など、大小約三十万件以上のお祭りが年間行われているといわれています。しかし、新型コロナウイルス感染症の影響により、日本全国の祭りが中止や規模縮小に追い込まれました。さらに、過疎化や人口減少の影響を受けて、地方の祭りの多くが継承の危機に瀕しているとの報道もなされています。孤立や分断、さらには対立が激化する現代社会の中で、和合と融和協調を象徴する祭礼が果たすべき役割は、ますます大きくなるように感じます。
平成二十八年にユネスコ(国連教育科学文化機関)が人類の無形文化遺産として、日本の祭り「山・鉾・屋台行事」三十三件を登録しました。残念ながら神田祭は、災禍による変容のために登録されませんでしたが、江戸・東京を代表する日本の三大祭として、いまもその伝統と誇りは氏子に脈々と受け継がれています。
私たちは、改めて受け継がれてきた神田祭の意義を再確認することにより、神田・日本橋に集う「職・住・学」多様な人々が、行政・民間企業・住民・学校の枠を超えて連携・協働することで、新しい地域コミュニティーを作り、神田祭が国際都市東京の象徴としてさらなる地域振興や観光の可能性も見出すことができるのではないかと思います。
神田祭の主役は、氏子の皆様です。地域への愛着と誇りを生み出す源泉が、神田祭にはあります。神田祭こそが、社会・経済・文化を統合しながら〝地域力 〟を活性化させ、人を育て、人をつなぐ力を持つ無形の文化資源です。
前回の神田祭では、初めて駐日大使館の大使をお招きして交流の場を設けました。参加した各国大使からは、神田祭は東京を象徴するすばらしい祭礼だとの言葉を頂戴しました。またインターネットや各種デジタル技術を活用して、海外や遠方の人にも賑わいをリアルタイムに伝えて、若い世代の関心を高める活動も進めてきました。
これからも伝統を守りつつ「変わらないために変わり続け」、新しい祭礼文化を創造しながら神田祭を後世に引き継いでいきたいと思います。